イスラエルへの武器売却停止を 国連人権理事会が決議
米独が反対 日本は棄権

 国連人権理事会(47カ国)は2024年4月5日、パレスチナに関する五つの決議を採択しました。人権状況をめぐる決議では、イスラエルへの武器売却停止やパレスチナのガザでの即時停戦を求めています。同決議には、イスラエルに武器を輸出している米国やドイツは反対し、日本は棄権しました。

 パキスタンが提出した同決議は、イスラエルへの武器売却や提供の停止のほか、イスラエルに対し、ガザ封鎖を解除して人道支援を行き渡らせるよう要請。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が任務を遂行するために十分な資金提供を確実に受けられるよう、各国の行動を促しました。

 また、イスラエルについて人権侵害や国際人道法違反の報告があるとして「重大な懸念」を表明しました。

 決議には28カ国が賛成、米国やドイツを含む6カ国は「ハマスに言及がない」として反対しました。日本を含む13カ国が棄権しました。日本の代表は「当事者から、さらなる説明が必要」などと発言しました。

 採択後、パレスチナの代表は決議に謝意を示す一方で、「反対票を投じた国や棄権した国の立場は分かりかねる」と批判しました。

ドイツは昨年10月にイスラム組織「ハマス」がイスラエルを攻撃して以降、イスラエルの安全を守ることが国是だと宣言。2023年度はイスラエルに対して、前年比で10倍の3億2650ユーロ相当(やく537憶円)の武器輸出を承認しました。

 日本は、3月12日の参議院外交防衛委員会で、安保3文書に基づく軍拡計画の一つである無人兵器強化として、政府は、イスラエル製小型無人攻撃(攻撃型ドローン)の購入を計画していることが分かっています。

 イスラエルへの武器輸出をめぐっては、ガザでの人道状況の悪化を受けカナダやスペインが新たな武器輸出を停止する方針を打ち出しています。

日本は即時停戦迫れ

 日本政府は、5日の人権理事会決議に棄権しました。背景には、イスラエルとの「防衛交流に関する覚書」(2022年8月)で、「防衛装備・技術協力や軍種間協力を含め、両国間の防衛協力を引き続き強化していく」とした合意があります。岸田政権は、イスラエルのガザ攻撃が続く中、イスラエルの軍需企業から攻撃用ドローンを輸入する計画です。

 日本は、国際法・国際人道法を犯し続けるイスラエルとの軍事協力などではなく、即時停戦の実行こそイスラエルと米国に強く迫るべきです。

パレスチナに国際法の適用を!

イスラエル国家 = 侵略国家  この地図から何を考えるか

  • 1947年11月29日、国連総会で「パレスチナ分割案」を採択
        11月~49年 イスラエルによる民族浄化(ジェノサイド)が始まる。 「ナクバ(大災厄)」と呼ばれています。
  • 1948年5月、イスラエル建国宣言
  •     5月、第一次中東戦争勃発 イスラエルはパレスチナの約77%を占領。
       「西岸地区」はヨルダンに併合。
       「ガザ地区」はエジプトの支配下に。
     この戦争で故郷を追われた「パレスチナ人」はおよそ75万人と言われる。人口の半数以上が難民となる。
  • 1948年12月、国連 ジェノサイド条約 1948年署名、1951年発行
  • 1956年10月、第二次中東戦争
  • 1967年6月、第三次中東戦争(「6月戦争」または「6日間戦争」)
     イスラエルはパレスチナの全土を占領
  • その後、この戦争で大勝したイスラエルは「パレスチナ」の領土を占領し、ヨルダン川西岸を中心に国策として入植を進めていきます。「西岸地区」が虫食いのようになっているのはその影響です。「入植」を辞書でひくと、「開拓地や植民地に入って生活すること」とあります。国際法違反にあたります。
  • いろいろな出来事がありますが、現在に至ります。

2023年10月7日、ガザのイスラム組織ハマス(ハマース・イスラーム抵抗運動略称ハマース)が主導の戦闘員たちがイスラエルに奇襲攻撃をしました。それへの報復としてイスラエルは、陸海空軍を総動員し、封鎖され逃げ場のないガザ(人口220万人)全域を猛攻しました。3カ月でガザ地区では約24、000人が犠牲となりました。その7割は子どもと女性です。

イスラエルのネタニヤフ首相は、今年いっぱい攻撃を継続すると宣言し、ガザ地区に住むパレスチナ人を他国に「移住」させるという国際法違反の計画(追放)をつきすすめています。

ハマース主導の戦闘員の武力行為はもちろん許されることではありません。しかし、日本のマスコミ、ややもすると世界のマスコミは、このことだけをとらえ、「先に攻撃したのはハマスだから、ハマスが悪い。自業自得」「イスラエルは自衛権を行使しているだけ」「西側諸国はイスラエルのみかた」と報道しています。

PLO(パレスチナ解放機構)、アラファト議長など、過去に聞いたことがある方もいるでしょう。あの時代?から現在に至るまで、「問題」なんら進展していないばかりか、イスラエル軍によるパレスチナへの「侵略・占領」が行われてきました。そしてそのことを世界(国連)は見て見ぬふりをしてきたし、アメリカなどはイスラエルを支持してきました。

あらためて言いますが、ハマース主導の戦闘員による武力行為は許されることではありません。しかし、その背景を見なければ事の本質を見失うことになります。
イスラエルとエジプトによるガザの封鎖と、ヨルダン川西岸地区の長年の占領が、その背景にあります。
占領の問題を集約しているのが、ユダヤ人入植地の拡大です。

「テロ」を生み出したのは、イスラエルによる、封鎖と占領からくる抑圧、暴力です。パレスチナの人々に尊厳のある生活への筋道を示さなければ、悲劇は繰り返されるでしょう。

「パレスチナ問題」 イスラエルは侵略国・侵略者。 欧米、日本政府、が「知られたくない事」がそこにあります。

「ハマス」の攻撃を利用し、ガザにミサイルを撃ち込む。「避難」と称して「国外撤去」

「ガザの民間人に関する政策方針の選択肢(要旨)」

ガザの全住民をエジプトのシナイ半島の砂漠地帯に移送することを提案するイスラエル諜報省が作成した政策文書の存在が明らかになりました。イスラエル政府も公式の文書として存在を認めていますが、首相府は「仮説に過ぎない」としています。
しかし、内容を見る限り、これまでネタニヤフ首相や政府関係者がこれまで言ってきたことと符合する点もあり、今後「ガザ」がどうなっていくのかを示唆しています。

最初に「イスラエル国家は、今回の戦争を招いたハマスの犯罪に照らして、ガザ地区の人々に現実にも明確な変化をもたらさなければならず、ハマス政権の打倒と並行して、我々がどのような政治的な目的を遂行すべきかを決定しなければならない」と書かれてあります。

過去、1948年5月、イスラエルが建国宣言した直後に、第一次中東戦争勃発しました。 49年に休戦するまで90万人と推定されるパレスチナ人が一時避難しましたが、建国したイスラエルが国境を閉ざし、帰ることを拒否したために「難民」になりました。

パレスチナの約77%を占領。ユダヤ人の人口比は85%以上となったのです。

出典: 国連人道問題調整事務所(OCHA)をもとに作成
「アマクレク人を忘れるな」

アマレク人は旧約聖書に描かれたイスラエル民族の敵で、絶滅の対象とされる

★ネタニヤフ氏は軍が地上作戦を準備していた2023年10月末以降、「アマレク人を忘れるな」と繰り返して兵士をあおりたてた。

★ガザに地上侵攻したイスラエル兵士は「アマレクの子孫を一掃する」と叫び、パレスチナ人の子どもらの殺害を正当化している。

★ヘルツォグ大統領はハマスの行動に「民間人が関与していないというのはウソだ」「全民族に責任がある」と、市民への無差別攻撃を奨励した。

アメリカの共犯責任を問う

「アメリカは、ロシアがウクライナで市民の生活や命を脅かす行動をとった際には、戦争犯罪だとあれほど強く批判したのに、イスラエルには沈黙を決め込んでいる。二重基準だ」 こうした批判をアメリカは受けています。
アメリカはイスラエルにとって最大の軍事支援国です。年間の軍事援助は約38憶㌦に達しています。ハマスによるテロ後、バイデン大統領は追加支援軍事予算143憶㌦を含む補正予算を議会に要求しました。この予算が通れば、通常の予算と合わせ、イスラエルの1年間の軍事費(230憶㌦)の8割近い額がイスラエルにわたることになります。

アメリカ・カリフォルニア州裁判では市民がアメリカ政府首脳を提訴するなど、アメリカ国内でも、大規模なデモが行われています。

ジェノサイド条約(抜粋)1948年署名、1951年発行

第1条

締結国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを、防止し処罰することを約束する。

第2条

この条約では、集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われた次の行為のいずれをも意味する

「ジェノサイド」の意味は? 国連広報センター

ジェノサイド条約の第2条によると、ジェノサイドとは、国民的、人種的、民族的または宗教的集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われた、次の行為のいずれをも意味します。

(a)集団構成員を殺すこと。

(b)集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること。

(c)全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。

(d)集団内における子どもの出生を防止することを意図した措置を課すること。

(e)集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと。


ジェノサイド条約は、ナチスによる600万人のユダヤ人殺害(ホロコースト)を契機の一つとして1948年に採択されました(1951年発行)。イスラエルはホロコーストの経験を背景に、ユダヤ人国家イスラエルの軍事的防衛を至高の価値とみなし、イスラエルによるパレスチナ占領は国際法違反だとする国連安保理決議を無視してきました。

イスラエルには、「(ホロコースト、ジェノサイドを経験した)私たちが何をしても私たちを批判する権利は誰にもない」(1962年 ゴルダ・メイヤ外相 のちに首相)というような「イスラエル批判=反ユダヤ主義」との考えが存在します。

これに、「イスラエルの行動はジェノサイドと言われても仕方ない」と警告したのが南アフリカです。南アフリカは、イスラエルがジェノサイド条約のほとんどを実行していると指摘。ラモラ法相は2023年12月11日の冒頭陳述で、ハマスのイスラエルへの武力攻撃がいかに深刻で、残虐犯罪をともなう攻撃であっても、条約違反は正当化されない」と述べました。

国連の国際司法裁判所(ICJ)は2024年1月26日、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区でのジェノサイド(集団虐殺)を防ぐためにあらゆる対策を講じるよう、暫定的に命じた。ただし、戦闘の停止は命じませんでした。

イスラム協力機構(57ヵ国)やアラブ連盟(22ヵ国・地域)が南アフリカを支持しています。審議に沈黙しイスラエルに武器援助を続けるアメリカは、「集団殺害の共犯」(ジェノサイド条約3条)の罪があるとの指摘もあります。

問題を解決するためには 3つの原則もって

  1. イスラエルが占領地から撤退すること
  2. パレスチナの独立国家を認める事
  3. イスラエルとパレスチナが相互に生存権を承認しあうこと

ある面で「国連が勝手にパレスチナ地方を分割した」ことから、話は始まっているわけです。国連はイスラエルとパレスチナの問題としてとらえるのではなく、国際法という視点をもって、最後まで責任を持ち対処すべきです。

シオニストとは、国家を持たない状態のまま世界中に拡散していたユダヤ人の中でも、彼らの故郷であるパレスチナ(イスラエル)に帰還し、そこに彼らによる国家を建設を実現するための運動(シオニズム)の活動に参加した人々を指します。

その名前の由来ですが、ユダヤ教の聖典である聖書(旧約聖書)の中に収められているゼカリヤ書の一節での神の啓示で「わたし(神)はシオンに帰り、エルサレムにただ中に住もう。」と言っているところから来ています。

ちなみに「シオン」とは、エルサレム地方の古い呼び名のことで、英語では「ザイオン」と発音します。

ただし、世界中のすべてのユダヤ人がこの運動に参加したわけではなく、ユダヤ教徒でも保守的なグループの中には、ユダヤ教における救いがメシア(神が遣わした救世主)によってなされるという教えの立場からシオニストに反対する人々も少なくありませんでした。

良く知るために  書籍

2023年12月31発行 パレスチナを知るための緊急講義

著者  岡 真理(おか・まり)早稲田大学文学学術院教授・京都大学名誉教授

今起きていることは何か?
パレスチナ問題の根本は何なのか?
イスラエルはどのようにして作られた国?
シオニズムとは?
ガザは、どんな地域か?
ハマースとは、どのような組織なのか?
いま、私たちができることは何なのか?


今を知るための最良の案内でありながら、「これから私たちが何を学び、何をすべきか」その足掛かりともなる、いま、まず手に取りたい一冊です。

(紹介文章はアマゾンより)

ハマースはテロ組織なのか⁈  P77~78

報道とは裏腹に、ハマースというのは、占領された祖国の解放をめざす民族解放の運動組織です。そして今回、2023年10月7日にハマース主導によりガザのパレスチナ人戦闘員が行った奇襲攻撃は、占領軍であるイスラエル軍に対する抵抗として、国際法上認められている抵抗権の行使です。

占領下や植民地支配下の人々は、武力による戦いや抵抗も含めて、国際法上、抵抗権が認められています。ただし、その場合、きちんと兵士とわかる服装をすることや、占領軍の兵士を攻撃対象にすることなどの規定があります。

今回の攻撃についてパレスチナの情報サイトで報道されているものを読むと、まず、「ハマースによる攻撃」とは書かれていません。「ハマース主導の戦闘員たち」です。PFLPは今回の奇襲攻撃を支持するという声明をだしています。ハマースに主導された、イスラーム聖戦や、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)など、パレスチナ解放を掲げる複数の民族組織が参加した解放のための作戦です。

日本の報道では、ハマースがガザからイスラエル側に侵入し、音楽祭やキブツの民間人を残虐に殺害したとされました。ガザの戦闘員たちが、キブツを襲撃したのは事実ですが、彼らは、ガザ周辺のイスラエル軍の拠点12カ所を攻撃しています。

キブツの攻撃、これは国際法違反であり戦争犯罪です。キブツの民間人を拘束し、ガザに連れ帰るという作戦も、もともと計画されていたようですが、民間人を巻き込むことも戦争犯罪です。ハマースが作戦としてそれをおこなっているのは戦争犯罪ですが、まず、狙ったのがガザ周辺の12カ所のイスラエル軍基地であり、そこを占拠し、その後、駆け付けた治安部隊と交戦して、全員殺されている。だから、まさに死人に口なしです。

そのことは全く報じられず、キブツや音楽祭を襲撃して民間人を殺したことばかりが報道されます。

P77~78

現代人文社 2015年

イスラエルへの武器売却停止やパレスチナのガザでの即時停戦など、国連加盟国は「決議」というかたちで国際法の順守を求めて議案を提出します。

しかし、アメリカは「反対」「拒否権」を行使。それでもだめなら「国連への分担金をださないよ」という脅し。日本はアメリカにくっついて…

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深く知りたい方は 書籍

法政大学出版局 2023年

ラシード・ハーリディー (Rashid Khalidi)
1948年、米国ニューヨーク生まれ。博士。コロンビア大学エドワード・サイード現代アラブ研究教授。ベイルート・アメリカン大学(AUB)で教鞭を執り、2003年より現職。パレスチナ研究機構(IPS)発行Journal of Palestine Studies編集委員。中東近現代史を幅広く専門とする。1982年にイスラエルによるレバノン侵攻に現地で遭遇し、Under Siege: PLO Decision-Making during the 1982 War (Columbia University Press, 1986) を著す。1991~93年にマドリードとワシントンでイスラエルとパレスチナの和平交渉に顧問として参加。Brokers of Deceit: How the U.S. has Undermined Peace in the Middle East (Beacon Press, 2013) など、米国によるパレスチナ問題への関与についても著作多数。

パレスチナ史を長年研究してきた著者は、この紛争を、入植者が先住民を追放するための植民地戦争として捉える。
 第1次世界大戦後にパレスチナを委任統治領としたイギリスは、ユダヤ人が本来の先住民だと主張するシオニズム運動の主張に従ってユダヤ人にのみ民族的な権利を認め、入植を支援した。その結果、第2次世界大戦後の建国の際にイスラエルは委任統治領の過半を占め、その後の戦争でパレスチナ人居住地を征服してアラブ諸国の攻撃を撃退する。新たな覇権国アメリカも、紛争を公正に仲裁するどころかシオニズムの主張を受け入れ、イスラエルの肩を持ち続けてきた。

強大な権力に翻弄されてきた民族の一世紀を描き出す。彼らの自決権が否定されてきた先に現在の混迷がある。

法政大学出版局 2017年

なぜ彼らは殺され、故郷を追われなければならなかったのか

それは「戦争のなかの偶発的な悲劇」ではなく、組織的・計画的に遂行された〈目的〉であった。

混迷する中東情勢の原点となる戦争犯罪を問う。

イスラエル人の歴史家である著者は、イギリスやイスラエルの軍事・外交文書や政治家の日記、パレスチナ人の証言など多彩な資料を駆使し、現代世界や中東情勢に影響を与え続ける組織的犯罪の真相を明らかにする。あのときパレスチナ全土でどのように住民は殺され、郷土を追われたのか。なぜ世界はそれを黙認したのか。当時の緊迫した状況や錯綜する思惑、追いつめられる人々の姿を描き、現在の不条理を問う。(紹介文章はアマゾンより)

法政大学出版局 2017年

アメリカ・シオニスト運動にみるネーションの相克と暴力連鎖の構造

1948年のイスラエル建国に至る政治過程において決定的な役割を果たしたアメリカは、民主主義・民族自決の理念に反するユダヤ人国家建設を何故支持しえたのか。系譜学的アプローチによりパレスチナ問題の根源に迫る。

アメリカ人であり、ユダヤ人であり、シオニストであることの孕む矛盾のなかで、イスラエル建国を実現したアメリカ・シオニスト運動の全様

帯より

法政大学出版局 2018年

偽りの神話を解体する  (下記 10の項目は ウソ だという事を論証しています)

 (1)パレスチナは無人の土地であった
 (2)ユダヤ人は土地なき民族であった
 (3)シオニズムはユダヤ教である
 (4)シオニズムは植民地主義ではない
 (5)1948年パレスチナ人は自ら居住地を捨てた
 (6)1967年六月戦争は「やむを得ない」戦争であった
 (7)イスラエルは中東で唯一の民主主義国家である
 (8)オスロ合意に関する諸神話
 (9)ガザに関する諸神話
 (10)二国解決案が唯一の道である。

 これらの主張は多くのイスラエル国民、ユダヤ教徒、アメリカ国民の人々の間では「常識」となっているようです。アメリカの同盟国や支配下にある国連加盟国でも同様かと思います。ですから21世紀現在進行しているガザにおける「ナクバ」、非暴力帰還運動への、イスラエル軍の容赦ない弾圧、殺戮が国際社会で正当化されてしまっているのではないでしょうか。

「この状況は突如起こったものでなく、『十の神話』を通じてシオニストが周到に準備したものだ」とイラン・パぺは語っています。

50年にも及ぶイスラエルによるパレスチナの侵略・占領は、シオニズムがまさに植民地主義であることを示すものだと彼は結論づけています。そのうえで提案される「二国解決案」― 他の国、国連は手を出すな ― が、パレスチナへの過酷な暴力と殺戮を合理化し、イスラエルのアパルトヘイト国家化、民族浄化を進めるものだと痛烈に批判しています。

良く知るために ドキュメンタリー

DVD/ NAKABA

イスラエル建国時の1948年に行われたパレスチナ住民の大量虐殺と土地略奪の事実は長年隠されてきました。

1948年、イスラエルが建国され、70万人以上のパレスチナ人が難民となった。動乱の中東で、人々が“NAKBA(大惨事)”と呼ぶ事件が起こっていたことを世界のどれほど多くの人が知っているだろうか…。孤高のジャーナリストが40年にわたり取材をした膨大な記録が一篇のドキュメンタリー映画として結実、歴史の闇に閉ざされようとする真実に一条の光を投げかける傑作が誕生した。
フォトジャーナリスト・広河隆一。現在、報道写真月刊誌「DAYS JAPAN」の編集長を務め、数々の戦場を取材し続けてきた。“被害者側にどんなことが起こっているのか。それを調べ、伝えるのがジャーナリストの役割”を信念とする彼は、40年間パレスチナ問題を追い続けてきた。その間に撮りためてきた写真は数万枚、映像は1000時間を越える。しかしその多くが、マスメディアの限界にぶつかり、未発表のままだった。その貴重な映像を映画として発表するため、2002年、有志による“「1コマ」サポーターズ”が発足。2008年、650名を超える人々に支えられた本作は、ついに完成を見た。パレスチナにおける戦乱と和平をめぐる動きを取材していくなかで記録された、廃墟となり地図から消えていった荒涼たるかつての村々の姿や、収容所での拷問や大虐殺の記憶、パレスチナとユダヤ双方の人々による生々しい証言。それらは“NAKBA=大惨事”の全貌を、静かに浮き彫りにしてゆく。
フランスやレバノンでも公開され高い評価を得た本作は、日本全国20館以上で上映、「ぴあ」満足度ランキングで2位に輝くなど観客の心を掴み、ドキュメンタリー映画としては異例とも言えるヒットを記録した。自主上映の動きは絶えることがなく、今も広がり続けている。
パレスチナ難民の発生は、イスラエルが誕生した1948年5月14日まで遡る。この年、420もの村々が消滅、廃墟となった。故郷を追われた人々のほとんどは、難民キャンプでの生活を強いられ、その過去を知らないキャンプ二世、三世が増え続けている。2008年、イスラエルは建国60年の節目を迎えた。しかし、パレスチナ人の暮らす場所を破壊し、彼らを追放しようという動きは、いまなお続いている。廃墟を訪ね証言を記録する広河の旅も、まだ終わっていない。

(紹介文章はアマゾンより)

DVD/ 壊された5つのカメラ (2011年) 

パレスチナの民主抵抗運動の中心地であるビリン村で農業を営んでいたイマード・ブルナートは、4男ジブリールの誕生を機にカメラを手に入れた。
息子の成長する様子と共に、村の耕作地を強制的に奪った「分離壁」の建設に怒った村人たちの非暴力デモを記録するイマード。撮影中、銃撃によって、彼のカメラは何度も壊れた。だが、その度に新しいカメラを手にいれ、息子の姿や友人たちの闘い、そして拡大していく入植の実態を克明に切り撮っていく。

イマードの個人史的な映像は、パレスチナ人たちのありのままの声を届けた作品として、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・観客賞を皮切りに、サンダンス映画祭などで賞をとっています。

届かぬ声 パレスチナ・占領と生きる人々  Unheard Voice:Palestinians,Israelis and the Occupation

DVD/ ガザ (2009年)

1993年9月、パレスチナ側とイスラエル側との「平和合意」直後から、ガザ地区最大の難民キャンプで、貧困の中でも家族愛で支え合って生きる家族の姿を6年にわたって記録した。そこには、激動の政治情勢に翻弄され「長年の占領から解放され、念願の独立国家を手にできるのでは」という期待と、その夢が打ち砕かれる現実への失望のはざまで揺れ動く民衆の心理と生活が克明に映し出される。

その一方、その「和平」崩壊の背景にあった、イスラエルによる合法化された占領の現実へのビジョンを見失ったパレスチナ自治政府の腐敗の実態が浮き彫りにされていく。

DVD/ 浸食  イスラエル化されるパレスチナ (2009年)

パレスチナ住民の家が次々と破壊される東エルサレム。新築したばかりの家を市当局に破壊され、テント暮らしを強いられた家族の4年間を追い、市当局や専門家の証言を交え、背後にあるイスラエル当局の「エルサレムのイスラエル化」政策の実態を描いていく。

さらに「分離壁」によって農地から切り離されたパレスチナ人農民たちの現実と苦悩、壁で外の社会と遮断さあれた町の住民が経済的な窒息状態に置かれていく姿を描き、「分離壁」が単なる「自爆テロから自国民をまもる安全保障の理由」ではなく、パレスチナ国家建設の基礎を侵食していくための手段になっている実態を暴いていく。

DVD/ 二つの❛平和❜  自爆と対話 (2010年)

自爆攻撃に走ったガザの大学生。彼を駆り立てたのは、日々のイスラエル軍の攻撃、家の破壊や殺戮の中で鬱積する人々の怒りと絶望だった。

一方、バスへの自爆テロで重傷を負ったイスラエル人の女性警察官。その長い入院生活を支える家族の姿を追い、パレスチナ人への不信と怒りを募らせる「被害者たち」の心情を描く。さらに15歳の娘を自爆テロで失った両親は、平和を願った遺志を継いで、平和活動を続ける。

彼ら「イスラエル人側の被害者」と「パレスチナ側の犠牲者」が❝平和❞を求めて対話を始めたが、両者の❝平和❞観には、埋めがたい深い溝があった。

沈黙を破る  2009年

2002年春、バラータ難民キャンプはイスラエル軍に包囲・攻撃された。恐怖の中で生きるその住民の生活と心情をカメラが追う。また、猛攻撃で破壊・殺戮されたジェニン難民の絶望的な状況を描き、❝占領❞の現実を伝える。

その一方、元イスラエル軍兵士たちのグループ「沈黙を破る」は、占領地での兵役の中で❝倫理・道徳観❞が麻痺し、人間性を喪失していく恐怖感を告白する。それはまた、イスラエル社会のモラル、国家の論理的な基礎をも破壊してしまう危機感からだった。

元将兵たちの証言や家族の戸惑いと反発を描きながら、❝占領❞がイスラエル社会に落とす深い影を問いかける。