緊急事態宣言発令中も「休業手当支払い義務はなくならず」厚労省

休業手当(労働基準法第26条)

(休業手当) 第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間 中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければな らない。


 労働基準法は企業の都合で休業した場合、休業補償として平均賃金の6割をしはらわなければならないとし、違反すると罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 労働基準法119条)が科せられます。
 逆に、使用者の責めに帰さない場合は、休業手当を支払わなくともいいわけです。

  使用者の責めに帰すべき事由による休業とは、使用者が休業になることを避けるため社会通念上の最善の努力をしたかどうかが判断の基準となります。言い換えると、不可抗力以外は 使用者の責めに帰すべき事由に該当すると考えるべきです。

★ 使用者の責めに帰さない事由

具体例としては、天災事変による休業、電休による休業、法令に基づくボイラー検査のための休業等

★ 使用者の責めに帰すべき事由

具体例としては 1.生産調整のための一時帰休 2.親会社の経営難から、下請工場が資材、資金を獲得できず休業 3.原材料の不足による休業 4.監督官庁の勧告による操業停止 5.違法な解雇による休業など

緊急事態宣言、休業要請に応じた場合は「使用者の責めに」になるのか、ならないのか? 天災事変??

 当初、厚生労働省は「不可抗力」による休業なら支払いの義務がないとしていました。しかし、使用者が緊急事態宣言による休業要請を理由に休業手当を支払わないケースが相次ぎ、国会でも「労基法上の義務付けがなくなると大変な事態になる」追及され、厚労省の姿勢が問われていました。

 

4月14日 「企業による支払い義務がなくなるものではない」と見解 厚生労働省

 緊急事態宣言が発令した場合の休業手当の支払いについて厚生労働省は、「企業による支払い義務がなくなるものではない」との見解を示し、ホームページにQ&Aとして公表しました。
 今回のQ&Aでは、「不可抗力」について、


① 休業の原因が外部で発生した
② 経営者が最大限努力しても休業が避けられない


という2つの要素を満たす必要があると指摘しています。

そのうえで、緊急事態宣言や要請は外部要因に該当するものの、労働者を自宅勤務や他の業務に従事させるなど「最大限の努力」を尽くしていなければ、「休業手当の支払い義務はなくならない」としています。

厚生労働省 サイト

● 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)

● 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)   問7に記載されています。

▶ 自宅待機や解雇といわれたら

休業手当 全額支給が基本

自宅待機命令 賃金の支払いは?  賃金の全額を請求することができます。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。

 勤務している会社(個人事業主も含む)がその会社の「責めに帰すべき事由」で休業する場合、言い換えればその「会社の都合」で休業する場合、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則等で別段の合意がない限り、労働者は民法第536条2項に基づいてその休業期間中の「賃金の全額」の支払いを請求することができます。

 労働基準法第26条(休業手当)では ”使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。” とあることから「会社の都合で休業になった場合は平均賃金の6割の休業手当しか支払ってもらえない」と理解している人が多くいますが、それは違います。

 労働者が会社から受け取る賃金はその労働者の生活を支える必要不可欠なお金ですから、会社の都合で休業になった際に労働者がそれを受け取ることができなくなってしまうと労働者の生活は破綻してしまいます。
 会社の都合で休業になった場合、民法第536条2項の規定の適用があるので、労働者は会社に対してその休業期間中の「賃金」の支払いを請求することが可能なのですが、民法第536条2項には罰則規定がありません。ですから、悪質な会社では民法第536条2項の規定など無視して労働者に休業期間中の賃金を支払わない可能性もでてきてしまいます。

そのため、労働基準法第26条で平均賃金の6割の「休業手当」の支払いを使用者に義務付けるだけでなく、それに違反する使用者を「30万円以下の罰金(労働基準法第120条)」の罰金という刑事罰を設けることで労働者の最低限の生活資金が得られるようにしているのです。

 労働基準法第26条の規定は、会社都合の休業が発生した場合に平均賃金の6割の休業手当の支払いを使用者に義務付けることで労働者の最低生活を保障するために定められた規定であって、民法第536条2項によって生じる支払い義務を軽減する趣旨で規定されたものではありません。

 緊急事態宣言でも、自宅勤務や他の業務に就かせる努力がないと支払義務はなくなりません。

自宅待機を命じられたら

•会社が休みになった場合、基本的に 100%の賃金を要求すべきです。

•100%の賃金がもらえない場合でも、6 割相当の休業手当の支払は必要です。

•労働者としては、働く意思があることを会社に示しましょう。

•在宅勤務であることは、賃金を下げる理由にはなりません。

全労連のサイト

日本労働弁護団サイトから Q&A Q1

▶ 解雇

 経営不振による「整理解雇」も、4要件に照らし、妥当性がなければ不当解雇になります。

①必要性 ②解雇回避努力 ③人選の合理性 ④説明・協議

 有機雇用で期間途中の解雇は、やむを得ない理由がない限り認められず、通常の解雇より厳しく判断されます。