「あずみの里」准看護師に逆転無罪 東京高裁

「刑法上の注意義務違反ない」東京高裁

 長野県安曇野市の特別養護老人ホーム{あずみの里」で2013年、入所者の女性=当時(85)=のおやつにドーナツを与え、窒息で死亡させたとして業務上過失致死罪に問われた準看護師の控訴審判決が7月28日、東京高裁でありました。

 入所女性は13年12月、ドーナツを食べた後に意識を喪失し、14年1月に死亡。准看護師は14年5月に書類送検され、同12月に在宅起訴されていました。介護中の事故をめぐり捜査当局が異例の捜査で個人の刑事責任を問い、一審がそれを追認した事件です。

地裁の判決

 準看護師を有罪とした一審判決(昨年3月の長野地裁松本支部)は、女性に「食事を丸のみしてしまう傾向があった」として、窒息防止などのため、事故6日前におやつがゼリーに変更されたのに、准看護師が確認を怠った(注意義務違反)としました。

高裁の判決

 これに対し高裁判決は一審判決が「特養にはどのようなリスクを抱えた利用者がいるか分からないから、(指示と違う)間食を提供すれば死亡という結果が起きる可能性があるとまで広げている… 広範かつ抽象的な予見可能性だ」と批判。
 そして「窒息の可能性が否定しきれないからといって食品の提供が禁じられるものではない。食事は精神的な満足感や安らぎをえるために有用かつ重要。身体的リスクに応じてさまざまな食物を摂取することは有用かつ必要」と指摘しました。
 その上で大熊裁判長は、女性が事故の1週間前まで今川焼やロールケーキ、おやきなどをおやつで食べており、ドーナツで窒息する危険性は低かったことを認定。
 おやつがゼリー系に変わったのも女性が食べ物を丸のみしがちで嘔吐することがあり、主に「感染症対策のため嘔吐防止を目的としていた」が変更理由だったとなどを認め、その変更は介護士の詰め所で保管されていた介護資料に記載されていたものの、「看護師に対する引継ぎのためのものとは認められない」などと認定。「ドーナツによる被害者の窒息当の事故を未然に防止する注意義務があったとはいえない」と述べました。

 一審が「准看護師が勤務の際にその資料を確認する義務があった」とした点を「飛躍がある」と批判し、ドーナツを提供したことが「刑法上の注意義務に反するとはいえない」と結論付けました。
 一審判決についてはさらに「ドーナツによる窒息と死亡の具体的な予見可能性を検討すべきなのに、それをしないまま(准看護師の)過失を認めた」とも批判しました。

 そして東京高裁の大熊一之裁判長は「窒息の危険と死亡の予知可能性は相当に低かった」と指摘し、罰金20万円とした一審の有罪判決を破棄して無罪を言い渡しました。

73万人分の署名  検察は上告の断念を!

一審で有罪判決が出た後、公正な裁判を求める署名が、控訴審に入ってからだけでも28万人分が集まりました。一審分と合わせて73万人の署名が裁判所に提出されていました。

 高裁判決は「起訴から5年たっており、一審判決に事実誤認がある以上、時間を費やすのは相当ではない」と述べています。

 弁護団の木嶋団長は「事故から6年半、准看護士を一日も早く解放したいと高裁も表明したわけだから、検察は上告すべきではない。全国の介護者と高齢者の尊厳と人間性の尊重する介護が実現することを願う」と語りました。