特養あずみの里業務上過失致死事件裁判で無罪を勝ち取る会が共同声明を発表

「尊厳を守り、介護の未来に希望を取り戻した東京高裁判決の無罪判決確定にあたって共同声明」

 本年7月 28 日、東京高裁は特養あずみの里業務上過失致死事件控訴審で、長野地裁松本支部の1審有罪判決を破棄し、被告 人 の山口 けさえ さんに無罪判決を言い渡した。この判決に対し東京高検は 8 月 11 日までに最高裁に上告せず、山口さんの無罪が確定した。
2014年 12 月 26 日に長野地検により起訴された山口さんが、ようやく刑事被告人席から解放されたことを心より喜び、同時に、改めて亡くなられたKさんのご冥福をお祈りするものである。
 准看護師の山口さん は 、介護職の手伝いで行ったおやつの配布後に起きた不幸な病死 で 、業務上過失致死という一個人の罪 によって 起訴され た。以来 今日まで6年半という長く苦しいたたかいが続いた。無罪になったとはいえ、山口さんにとっては「マイナスがゼロになった」にすぎない。ここに至るまでの、Kさん存命中から執行された長野県警捜査第1課のずさんな捜査 と 、 司法解剖すらされていないにも関わらず 、 そ れを鵜呑みにし「致死」で 起訴した検察、 そして 罪となる範囲を広げた2度の訴因変更を認め、あきらかな事実誤認に基づく不当な有罪判決を言い渡した長野地裁松本支部 に 対し、改めて強く抗議する。
 起訴状の中で、医療や介護の現場で日常的に行われる「振り返りと反省」を「自白」と されたことは、全国の関係者に大きな衝撃を与えた。また、「Kさんはドーナツで窒息し、それを配った山口さんにおやつの形態確認義務違反があった」とした1審の有罪判決は、多くの施設の食事に影響を与え 、 おやつの提供をやめるなど によって 、利用者から食べる楽しみを奪った。
 今回の高裁判決は、「Kさんがドーナツで窒息することは予見できず、山口さんに形態確認義務はない」とし、さらに「間食を含めて食事は、人の健康や身体活動を維持するためでなく精神的な満足感や安らぎを得るために有用かつ重要であることから、その人の身体的リスク等に 応じて幅広く様々な食事を摂取することは人にとって有用かつ必要である」とした。
山口さんに過失はなかったことを明らかにし、さらには施設での食事提供 が利用者の人間らしく生きることを支えるかけがえのない意義を持つこと まで言及 した この判決は、 1 審判決により委縮した全国の介護現場と関係者には安心と未来への希望を、利用者には生活の喜びを取り戻すものとなるだろう。
 私たちは「この裁判には介護の未来がかかっている」と訴えてきた。まさに「介護の未来」を守った判決であり、司法の良心が示されたものとして歓迎する。
 裁判で事実と道理にもとづいて 証言に立ってくださった みなさん 、死因の究明と鑑定に尽力してくださった専門医のみなさん、さらには無罪を求め 73 万筆を超える署名を寄せて積み上げてくださったみなさん、高裁判決後高検に上告断念 を要請 してくださった 4,500 団体のみなさんに心より 感謝の意を表明する。
 この歴史的判決を勝ち取るために、文字通り昼夜を分かたず奮闘していただいた弁護団に心より感謝するものである。


2020年(令和 2 年) 8 月 12 日
特養あずみの里「業務上過失致死事件」裁判で無罪を勝ち取る会
長野県民主医療機関連合会
中央支援団体連絡会
(構成団体
全日本民主医療機関連合会
全国保険医団体連合会
日本医療労働組合連合会
日本国民救援会