検察官にも「忖度」させるのか  政府・与党 検察庁法改正案 今国会での成立断念

検察庁法改正案 今国会での成立は断念  民主主義を求める世論の成果

 5月18日、政府・与党は特定の検察幹部の定年をを、内閣の意向で特例的に延長することを可能にする検察庁法改正案の今国会での採択を断念しました。安倍晋三首相は同日、二階俊博幹事長と会談し「国民の理解なしには進められない」との考えを表明。

 しかし、この法案は廃案ではなく、継続審議の扱いとされ、秋の臨時国会に持ち込まれます。

 

国家公務員法改正案

 5月8日、検察官の定年延長に内閣が権限を持つようにする検察庁法改正案の衆議院審査が与党により強行されました。

発端は安倍政権が1月に黒川弘務東京高検検事長の定年を延長させる閣議決定をしたことです。

戦後、日本国憲法のもとで制定された検察庁法は、検事の定年延長は認めませんでした。それは、検察官人事への政治の恣意的な介入を阻止し、検察官の独立性確保のためだです。(三権分立を担保するため)

 今回の法案は、違法な閣議決定につじつまを合わせるため検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認める時は63歳を超えても、さらには退官年齢(65歳)を超えても検事長などのまま勤務させることができるという抜け穴まで設けたもので許されないものです。

 法案は、検察官人事への介入を通じて内閣が恒常的に司法の一角に対する支配を可能とすることで、憲法の基本原理である権力分立を破壊するものです。

 森友・加計問題で「忖度」(そんたく)という言葉が話題になりました。その背景には官僚の人事権を内閣がにぎったことが要因の一つにありました。

「三権分立」- 検察官の人事を内閣が握ったら、政府の犯罪をあばくことができるでしょうか? 「忖度」しませんか? 三権分立が壊れませんか?

署名用紙    ●安倍9条改憲NO! 全国市民アクション

ネット署名  ●change.org

法案の問題点   国家公務員法改正案

 審議されている法案は①「国家公務員法改正案」(定年を段階的に60歳→65歳 2022年度から)と②「検察庁法改正案」(検察長らは63歳で退く「役職定年」を設ける。内閣判断で「役職定年」を最長3年延ばせる 施行2022年4月1日 )という2つの法案をセットにしたものです。

問題になるのは検察庁法改正案です。制度として定年を65歳と一律に延長するのは問題ありませんが、内閣が特例として認める ということが問題です。

特例の中身ってなんなんでしょう?

日本弁護士連合会も抗議声明

 日本弁護士連絡会も4月6日付けで「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」を公表し、検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対しています。

問題点を指摘

日本弁護士連絡会の抗議声明は下記の内容です。

① 検事総長は特例として勤務延長を認めることができる上、役職定年がない。

② 他の検察官について特例として勤務延長(最長3年間)を認められる。

③ 役職定年に達しても特例としてそのままの役職で勤務できる。

「特例」の判断は内閣ないし法務大臣がおこなうもので、検察官人事へ強く介入することになります。

 大川副会長はまず「定年を63歳から段階的に65歳に引き上げることに反対するものではない」と断った上で、内閣や法務大臣の裁量で定年や役職定年の延長が可能となる点を問題視。「時の政権が検察人事に強く介入してしまう結果となる」「検察官の政治的な中立性が損なわれると、憲法の基本原則である三権分立を揺るがす恐れさえがある」と訴えました。

検察も忖度

 検事も人の子、自分の将来はどうなるのかと考えます。内閣の評価次第で自分の人事が左右されるのであれば、政権がらみの捜査がトーンダウンしたり、忖度したりすることも十分起こり得ます。こうした人間心理に基づいて考えても、検察の中立性を欠いてしまいます。

 今回の法案が通れば、検事長や検事総長は、相当に内閣の顔色をうかがうようになるのではと思います。かつての田中角栄元首相(ロッキード事件)の逮捕劇のようなことは、まず起こり得なくなるのではないでしょうか。

 検察官は、時の総理大臣も逮捕・起訴できる権限を持ち、政治権力の不正を法的に追及できる唯一の機関です。安倍政権ではこの間、公職選挙法違反疑惑やカジノ汚職が発生し、「桜を見る会」をめぐっては安倍首相自身が刑事告訴されるなど、検察の捜査対象となる問題が次々と出ています。

 こうした中で。内閣が恣意的に検察人事に介入できるようになれば、政権の疑惑にメスを入れる捜査の公正性が損なわれかねません。

 単に定年を伸ばすということだけではなく、役職定年をするか、しないか、個別に判断するものであり、政権による検察への人事の介入をやりやすくする内容で、極めて不適切です。

「#検察庁法改正案に抗議します」 ツイッターデモ 広がる

 8日の与党による審議入り強行を受けて、9日の夜から10日にかけて広がった「#検察庁法改正案に抗議します」のツイッターデモは歌手や俳優など著名人も投稿し、13日には500万人をこえました。
 検察内部や裁判官からも批判の声があがり、与党の国会議員からも「とんでもない」という声が相次いでいます。ベテランの衆議院議員の一人は「警察や検察と政治の関係には、政治は口をださないという不文律があるのだ。政治が検察を握ったら独裁になる」と述べます。

 コロナ禍でみんなが苦しんでいるときに、政権に都合のいい検察をつくるという私利私欲の姿勢に批判が爆発しています。ましてや「自粛」により抗議のデモや集会ができないこの時期に。 何で今やる? 俗にいう「火事場どろぼう」です。

 安倍政権は、内閣人事局を設置し、霞が関の幹部人事を首相官邸で握ることで行政の私物化を進めてきました。今度は、刑事司法の政治的中立の観点から強い独立性を付与されている検察を私物化し、まさに独裁政治をすすめようとしています。

国家公務員の65歳定年に反対しているのではありません。

 検察庁法改正案は公務員法改正案の中に束ねられ一括審議とされて、内閣委員会に提出されています。「国家公務員法改正案」(定年を段階的に60歳→65歳 2022年度から)および、検察庁法改正案の検察官の65歳定年延長に異議・抗議をしているのではありません。
 あくまでも検察庁法改正案の「特例として」という、内閣および法務大臣の人事への介入について抗議しています。

 定年を延長すること自体が問題でなく、役職定年を設けた上で政権の個別判断ができるということが問題としています。